黒川温泉に浸かる:九州の旅その三

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黒川温泉の街は渓流が削った深い谷の底に展開している。我々はその谷を登ったところの高台に建っているホテルに投宿した。三愛高原ホテルといって頗る眺めがよいのが売りだという。我々が着いたのは午後四時頃で、まだ日が沈むには間があり、雨も止んでいたのだが、生憎風景を眺めることはできなかった。空はまだ厚く閉ざされたままだったのである。

チェックインして荷物を部屋に収めると、バスに乗って黒川の温泉街に出かけた。渓流に沿って木造の古い建物が並んでいて、絵になる光景を呈している。なかなかいい感じだ。それらの温泉宿は、たがいに提携して、湯めぐり手形を発行している。その手形を持っていれば、どこの宿の温泉にも浸かることができるという。筆者と横子は、温泉街を一周した後、新明館という旅館に立ち寄った。今子は、湯冷めが心配だから入らないという。

この宿の湯は洞窟風呂といって、洞窟の中に沸いた湯が売り物とのこと。宿の中には入らずに、直接この洞窟に行くようになっている。脱衣場なども極めて質素なものだ。裸になって洞窟に入っていくと、洞窟といっても横穴式で、外からは丸見えだ。狭い渓谷を挟んで対岸の道は、すぐ目の前だから、その道を歩いている人からは、湯に浸かっている我々がよく見えるに違いない。

風呂自体はなかなかのものだ。適当に熱いので、熱湯好きの筆者にはすこぶる都合がよい。ただ天然の横穴かどうかわからぬが、底がざらざらして、長く座っていると尻が痛くなるのが難点だ。

洞窟風呂の隣りには穴風呂なるものがある。そこに裸のまま移るものがいるので、我々もつられてそちらに行ってみることにした。ところが、二つの風呂を結ぶ道は、外から丸見えなので、我々の裸姿は通行人の目にさらされているということになる。だが、人の目を気にするほどの歳ではない。我々は真っ裸のまま、通路を歩いて隣りの風呂に移っていった。

こちらの風呂は穴風呂と言うだけあって、本物の穴の中に湯が沸いていた。穴は合わせて三つあり、それらを狭い水路が結んでいる。我々は一番深い穴の中に入り込んで、程々に熱い湯を楽しんだ次第だ。

湯上り後、近くにある喫茶店でビールを飲み、六時ごろホテルに戻った。しかして夕食後、今度はホテルの風呂に浸かった。

こちらは、昨夜のホテルのものより一回り小ぶりだったが、湯の方は昨夜よりも熱くて、筆者の好みに適っている。露天風呂もあるが、室内の風呂とは連続しておらず、いったん外に出なければ行かれぬというので、行かずに済ませた。大気が冷たくて一気に湯冷めしそうだったからだ。

風呂に浸かった後は、持参した焼酎を飲みながら、二子と清談に耽った次第だ。


関連サイト:あひるの絵本 





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