尖閣を巡りエスカレートする中国の挑発

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先日(12月13日)、尖閣上空に中国の航空機が侵入し、航空自衛隊機が出動する事態があった。日本政府はこれを領空侵犯だとしてただちに抗議したが、中国は中国で尖閣の領有権を主張し、かえって日本の対応ぶりを厳しく非難する有様である。中国が船舶による領海侵犯に加えて、航空機による領空侵犯を行ってきたことで、尖閣を巡る日中対立は新たな事態を迎えたということができる。このままエスカレートすれば、軍事衝突の危険性さえ予想される。中国は果して、そこまで考慮に入れて、日本への挑発行為をエスカレートさせているのだろうか。

これについて、中国共産党の機関紙人民日報のWEB版人民網(日本語版)に興味深い論説が乗っている。「日本側の"阻止"は最終的に中日戦闘機の対峙を招く」と題したこの論説は、尖閣を巡る問題の責任はあげて日本側が負うべきだとする従来の主張を繰り返しながら、尖閣の領有権に関する中国の姿勢は一歩も揺らぐものではなく、武力衝突の危険性を冒してまでも、尖閣に対する空海両面からのパトロールを強化するとして、つぎのように述べている。

「日本側の軍用機が今後も中国海監の航空機の"阻止"を継続した場合、両国の軍用機が対峙する日が必ず訪れるということを、日本側は明確に理解しなければならない。日本側の挑発を前に中国が尻込みすることは決してありえない。中国の庶民はそのような尻込みを認めない。中国空軍の戦闘機は必ず釣魚島へ向かい、日本の軍用機と意志を争い、甚だしくは雌雄を決する。」

これは極めて冒険主義的な発想である。中国の指導部は、果して本当に、日本との武力衝突、つまり戦争を考えているのだろうか。

中国はかつて、領土紛争を巡ってロシアとの間で武力衝突を繰り返した実績がある。日本との間でも武力衝突に踏み切る可能性は否定できない。尖閣をめぐっては、2010年の漁船衝突事件以来日本側の優位な状況を許しているという認識があり、共産党指導部としても、国民の手前、おいそれと引き下がれない事情があるようだから、勢い余って武力衝突に踏み切り、一気に「雌雄を決する」ことを目指すかもしれない。

日本としては、外交努力をせずに、このままだらだらと事態をこじらせ、その結果武力衝突を招くといった事態は避けねばならない。中国の方でも、日本の出方を、かたずを飲んで見つめているに違いない。お互いに意地を張りあって、暴力を振るい合うことほど、不体裁なことはない。とにかく頭を冷やすことだ。


関連サイト:中国を語る 





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