二年ほど福州での勤務をした後、陸游はいったん故郷の紹興へ帰ることになった。次の職への拝命を待つためである。そこで正月に福州をたった陸游は、紹興を目指して北へ向かった。その北帰行の途中東陽を過ぎた。浙江省金華県である。初春のことで、酴醾(とび)の花が咲き誇っていた。それを見た陸游は一篇の詩を作った。「東陽にて酴醾を觀る」である。
東陽にて酴醾を觀る
福州正月把離杯 福州 正月 離杯を把る
已見酴醾壓架開 已に見る 酴醾の架を壓して開くを
吳地春寒花漸晚 吳地は春寒くして花漸(やや)晚ければ
北歸一路摘香來 北歸 一路 香を摘み來らん
福州で別れの盃をとったのは正月だったのに、もう酴醾が棚を圧して咲いている、我が故郷の呉は春まだ寒く花も遅いので、北へ帰る道筋花を摘んでいくことにしよう
酴醾はつる性の灌木で香り高い花を開くという。その花を土産に、故郷目指して北を目指して進んでいく陸游の姿が彷彿とするような作品だ。
関連サイト:漢詩と中国文化
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