中国は負福祉国家:精華大学教授秦暉氏曰く

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雑誌「世界」に連載中の「中国民間との対話」最終回で、精華大学教授秦暉氏が、中国を「負福祉国家」だといっている。負福祉とは、福祉政策が不平等をさらに拡大させることをいうらしい。低福祉やゼロ福祉と言う言葉は聞いたことがあるが、マイナス福祉と言う言葉は聞いたことがない。そんな概念が成立しうるというところに、今日の中国が抱えている深刻な問題があるようだ。

中国は毛沢東の時代から負福祉国家だった、と氏は言う。中国のシステムは、富の分配に関してプラスの調節を行わず、反調節にあたるマイナスの調節を行う。その結果、強者はより強くなり、弱者は一層弱くなる。というのも、中国の政治システムの中で福祉が問題になる場合、左派は福祉増加を主張するが、増加するのは特権者の福祉である。また右派は福祉の削減を主張するが、減るのは庶民の福祉である。こうした事態が起こるというのである。

負福祉によって一部の者に富が集中するが、それらは中国国内では有効に使われない。そのため奇妙な金余り現象が生じて、金持は金の運用を西側諸国に求めるようになる。その結果、中国マネーが米国債を支えるというような事態が生じる、というのだ。

中国と異なり欧米諸国では、かりにも福祉はプラスの方向で動いている。その場合問題となるのは、負担との間のバランスだ。選挙で左派が選ばれると、有権者は福祉の増大を期待するが増税は望まない。右派には減税の期待が集まるが福祉削減は望まない。その結果財政赤字だけは確実に増えていく、といった事態が起こる。

以上の議論を踏まえて、氏は次のように言う。「今日の問題点は、西洋の政府は資本主義の権力しかないのに、社会主義の責任も負っている。一方で中国政府は社会主義の権力を擁するが、資本主義の責任しか負わない・・・憲政制度がないので政府の権力は大きいが、責任は小さい。政府の権力が大きいので庶民の自由は少ない。責任が小さいので。庶民の福祉も少ない」


関連サイト:中国を語る 





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