アサド後のシリアはどうなるか

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シリアの内戦が泥沼化し、国家の崩壊が懸念されるようになってきた。これまでに死んだ人の数は7万人以上(一説には9万人以上)、行方不明者は数万人、アサド政権により拘束されている反体制派の国民は15万~20万人ともいわれる。また200万人が家を失い、国境を超えて亡命したものは100万人以上に上るという。まさに国としての体裁を失いつつあるといえる。

問題はアサド政権がいつまでもつかということだが、仮に国際社会が介入しなければ当面は存続しつづけるだろうと予想されている。アサド政権には高い忠誠心を持った勢力がついており、彼等はアサドの死が自分たちに対する死の報復をもたらすことを恐れているので、最後まで命を懸けて戦うだろうというのだ。これに対して、反体制派はバラバラの勢力からなっている。それは離反兵士を中核にした自由シリア軍のほかに、シリア国内の雑多な地域勢力や国外から集まってきたジハーディストからなり、お互いの意思疎通は殆どないとされる。それぞれが勝手にアサドの打倒を目指しているわけである。

いまのところアサドは、バラバラな反体制派を前にして、まだ有利な戦いを進めている。よほどのことがなければ、近いうちに崩壊することはないだろう。もしその可能性があるとすれば、アメリカをはじめとした国際社会が武力介入することだが、アメリカのオバマ政権は、シリアが第二のアフガニスタンになることを恐れて、なかなか介入に踏み切れないでいる。

しかしシリアの情勢を成り行きにまかせていては、最悪の事態に陥る恐れがある。かりにアサドが反体制によって殺されるような事態が起きれば、シリアは完全に空中分解するだろうと予想される。シリア国民による自主的な政権作りはほとんどありえず、シリアはいくつもの利害集団によって分割されるだろう。そうなった場合には、アサドの武器庫は略奪を受け、化学兵器を含めた危険な武器がならず者の手に渡る恐れも出てくる。

シリアがカオスに陥れば、その余波は周辺のアラブ国家にも波及し、中東は一気にヒートアップするだろうと思われる。それは世界にとっておぞましい悪夢をもたらすだろう。

それ故、アメリカを始め国際社会には、いつまでもシリアを放置しておく余裕はない。そんな国際世論が高まりつつあるようだ。(イラストはEconomist から)

(参考)The death of a country As Syria disintegrates, it threatens the entire Middle East. The outside world needs to act before it is too late Economist





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