存在感を増すドイツ軍

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国際舞台におけるドイツ連邦軍(Bundeswehr)の存在感が増しているようだ。ドイツ軍はアフガニスタンに4000人以上派遣されているのを始め、コソヴォ、レバノン、スーダン、ウガンダ、コンゴといった国々に、国連の平和維持活動の一環として派遣されており、海外派遣の総数は6000人に達する。これに加え、マリにおけるフランス軍の活動を支援することを目的に、新たに80人を派遣する計画がある。

ドイツ軍は1955年に近隣諸国の理解を前提にして再建されたが、これまではあまり表だった活動を控えてきた。日本の自衛隊と比べれば、れっきとした軍隊として内外ともども認知されているが、なにしろナチス時代の遺産を抱えていることもあり、軍事行動には慎重だったのだ。それがここへきてぐっと存在感を増してきているのには、どんな事情が働いているのか。

ひつには、ドイツの軍事力に対する近隣諸国の脅威感が弱まっていることがある。それには、ドイツ軍がNATO軍の指揮下に組み込まれ、主としてNATO軍として行動していることが働いている。つまりドイツ単独の軍事行動ではなく、国際的な軍事活動に協力する形で行動しているとアピールできていることが、ドイツ軍への諸国のアレルギーを弱めているわけだ。

二つ目は、ドイツがユーロ圏内において国力相応の貢献をなすべきだとする期待が高まっていることだ。ユーロの最大の受益者がドイツであることは確実なのに、ドイツはその受益に見合った貢献をしているだろうか。こうした疑念がユーロ圏内において強くなってきた。そしてその疑念に応えるような貢献とは、ユーロ圏の権益を守るための軍事的な貢献だとする理解が強まってきた。それが、ドイツ軍をますます活発に行動させる要因となっているのではないか。

それゆえ、最近のドイツ軍の存在感の高まりは、おもに国際政治的な枠組みの中で生じていることだといえる。ドイツ自らが自分の軍事力を誇示したいというより、周りの国にせきたてられて軍事的な貢献に乗り出している。少なくともドイツ人は、そう自分に言い聞かせているフシがある。

(参考)Is Germany's Muzzled Military Moving into a New Era? By Erik N. Nelson TIME





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