階層間格差の拡大と階層間移動の減少

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日本もアメリカ並みに階層間格差が拡大し、しかもその格差が固定化する傾向がみられると指摘されるようになった。そのお手本のアメリカについてだが、ニアル・ファーガソンが.Newsweek に寄せた小論の中で分析している。(The End of the American Dream)

彼によると、アメリカでは階層間の所得格差が拡大する一方、階層間の移動は減少しているという。それに伴って、階層間の対立が固定し、アメリカは次第に分断された社会になっていきつつあるという。

アメリカはもともと、ヨーロッパ諸国に比較すれば、不平等に寛容な国だったとファーガソンはいう。それは、不平等が固定されたものではなく、誰でも努力すれば成功する機会がアメリカにはある、と信じられていたことに基づく。したがって、社会的な流動性が無くなり、努力しても這い上がれないと人々が感じるようになれば、その社会は一種の危機に直面する、といいたいようなのだ。

なぜ、こうなったか。それはアメリカの経済政策に大きな原因がある、とファーガソンはいう。アメリカの経済政策は、株や債券などの金融商品の価値を上げることを最優先の課題としてきた。ところで、こうした金融資産を多く所有しているのは、金持の階層である。それらの金持は、その金を自分で稼いだというより、親から相続したものの方が圧倒的に多い。

アメリカの経済政策は、金持が親から引き継いだ莫大な金融資産をもとに、努力せずしてますます金を儲けることができるいっぽう、貧乏人はそこから零れ落ちて、ますます格差が拡大するような方向に働いてきた。

こうなったのは最近のことである。21世紀の最初の数年間に、アメリカ社会の分断は劇的に進んでしまった。それをいま、日本の市場原理主義の政治家たちが真似しようとしているわけだ。


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