コモン・ローとシビル・ロー

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筆者は法律の専門家ではないが、それでもコモン・ロー(Common Law)とシビル・ロー(Civil Law)の区別くらいはつく。簡単にいえば、コモン・ローはイギリスの法システムを現す概念で、シビル・ローはヨーロッパ大陸系の法システムを現す概念だということだ。世界的な視野からすれば、シビル・ローが優勢で、イギリスのほか、カナダやオーストラリアなどイギリスの文化の影響を強く受けた国以外には、殆どの国がシビル・ローを採用している。日本ももちろんそうだ。

コモン・ローというのは、イギリスの歴史の中から生まれてきたものだ。その淵源は11世紀に遡る。1066年にウィリアム征服王がイギリスを統一して以来、イギリス全土が同じ法によって治められるようになるが、それは慣習法とも言うべきもので、何事も過去の事例を参考にして、物事の是非を決めていこうとするものだった。したがって、紙に書かれた法律よりも、裁判所での判例がものを言ってきた。イギリスがいまでも正文憲法を持たないのは、コモン・ローの伝統の上に国家が成り立っているからだ。

これに対してシビル・ローはローマ法をモデルにして作られた。ローマ法というのは、明文化された法律に基づいて、物事の是非を決めていこうとするものであり、コモン・ローがいわば経験的であるのに対して、極めて体系性の強い法体系であった。

ところで、コモン・ローの特質はイギリス王室の王位継承順位にも貫かれていた。イギリスの王室にあっては、王位継承者に複数の子が生まれた場合には、男子を優先し、男子がいない場合に限って女子が継承することになっていたが、これも長い歴史の積み重ねから生まれてきた、慣習法の一種だったわけである。

ところが2011年になって、新たに王位継承順位を定める明文法が成立した。その法律は、これまでの慣習を覆し、王位継承順位は、生まれた順にするというふうに定めたのであった。つまり男女を問わず先に生まれた子に優先権が生じるようにしたのである。

さて、いまや英国皇太孫妃ケンブリッジ公夫人の妊娠出産が、英国国民の最大の関心事になっている。もし彼女の産んだ最初の子が女子だった場合には、その子が王位継承者になる。そんなわけで、英国国民は歴史的な瞬間を、固唾を飲んで待っているというのである。

(参考)What is the difference between common and civil law? Economist







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