陸游の七言律詩「秋の晩閑歩すれば、隣曲、予の近ごろ嘗て病に臥せるを以て、皆欣然として迎へ労らふ」(壺齋散人注)
放翁病起出門行 放翁 病より起きて 門を出で行けば
績女窺籬牧豎迎 績女は籬に窺ひ 牧豎は迎ふ
酒似粥醲知社到 酒は粥に似て醲(こ)く 社の到るを知り
麭如盤大喜秋成 麭(もち)は盤の如く大にして 秋の成るを喜ぶ
帰来早覚人情好 帰来 早に人情の好きを覚え
対此弥将世事軽 此に対して弥(いよい)よ将って 世事を軽んず
紅樹青山只如昨 紅樹 青山 只 昨の如きも
長安拝免幾公卿 長安 幾公卿かを拝免する
わしが病床から起きて門を出ていくと、糸紡ぎの女は生垣からのぞき、牧童は出迎えてくれる、酒が粥のように濃いのは祭りが近いせいか、餅は大皿のように大きいのは豊作のしるしか(放翁:陸游の自称、牧豎:牧童、社:村祭り、盤:大皿)
帰ってきて以来、人情の厚いのに感激し、これに対して出世のことがますますどうでもよくなる、紅樹と青山は昔と変わらぬが、長安では何人の大臣が入れ替わったことか
淳熙4年(1193、69歳)故郷紹興での作。しばらく病に伏したあと、具合がよくなって外へ出たところ、隣近所の人が暖かく出迎えてくれた。その人情味を喜ぶとともに、役所勤めの馬鹿馬鹿しさを対比したものだ。
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