陸游の七言律詩「飯罷りて戯れに隣曲に示す」(壺齋散人注)
今日山翁自治廚 今日 山翁 自ら廚を治む
嘉肴不似出貧居 嘉肴 貧居より出づるに似ず
白鵞炙美加椒後 白鵞 炙は美なり 椒を加へし後
錦雉羹香下豉初 錦雉 羹は香ばし 豉を下せし初め
箭茁脆甘欺雪菌 箭茁(せんさつ) 脆甘にして雪菌を欺き
蕨芽珍嫩圧春蔬 蕨芽 珍嫩にして春蔬を圧す
平生責望天公浅 平生 天公の浅きを責望するも
捫腹便便已有余 腹を捫すれば便便として已に余り有り
今日はわし自ら台所に立つとしよう、このすばらしい料理は貧乏人の家の物とも思えまい、鵞鳥の肉は胡椒を振って火であぶるとうまい、雉の肉は味噌を加えてスープにするとうまい(嘉肴:素晴らしい料理、炙:火であぶった肉、羹:スープ、豉:味噌)
筍は柔らかくシロキノコよりもうまい、ワラビは珍味で春野菜よりもうまい、平生天の恵みの浅いことを愚痴っていたが、こうして満腹の腹をさすると、大いに満ち足りた気分になる(箭茁:筍、雪菌:雪のように白いキノコ、春蔬:春の野菜、便便:腹がふくれたさま)
慶元六年(1200、76歳)、故郷にあっての作。自らの手で作った料理を食って満足するさまをユーモラスに歌う。陸游の楽天的な側面をよく現した作品だ。
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