嘉泰四年(1204)、陸游は八十歳を迎えた。その年の正月に詠んだ詩が「剣南詩稿」第五十六巻を飾っているが、そこから第八十五巻の最後までの詩の数は3000篇、「剣南詩稿」全9000余篇のうち実に三分の一が、八十歳を過ぎてから六年間で書かれたということになる。陸游の創作力が老いてもなお衰えなかったことを物語っている。
陸游の五言律詩「甲子の歳元日」(壺齋散人注)
飲罷屠蘇酒 屠蘇の酒を飲み罷んで
真為八十翁 真に八十翁と為(な)れり
本憂縁直死 本(もと) 直に縁(よ)りて死せんことを憂へしに
却喜坐詩窮 却って詩に坐して窮するを喜ぶ
米賎知無盗 米賎(やす)ければ盗無きを知り
雲暗又主豊 雲暗ければ又た豊を主(つかさど)る
一簞那復慮 一簞(いったん) 那ぞ復た慮(おもんばか)らんや
嬉笑伴児童 嬉笑 児童に伴はん
屠蘇の酒を飲み終わって、八十歳の翁になったことを実感する、直情な性格が災いして早死にするかと思っていたが、のんびり詩作をしながら貧乏生活を続けることが出来た
豊作で米が安ければ盗賊は流行らず、雲が暗く天気が良くないと不作が気にかかる、だがとりあえず生活のことは忘れて、笑顔で子供らとともに過ごそう
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