陸游の五言律詩「衰嘆」(壺齋散人注)
十年三堕歯 十年 三たび歯堕つ
久兮嘆我衰 久しいかな 我の衰ふるを嘆くこと
亹亹循天理 亹亹(びび)として 天理に循ひ
兢兢到死時 兢兢として 死の時に到らん
窮空顔子巷 窮空 顔子の巷
勤苦董生帷 勤苦 董生の帷
道遠余生趣 道遠くして 余生趣(すみやか)に
常憂日影移 常に日影の移るを憂ふ
この10年の間に三回も歯が抜けた、自分の衰えを嘆いて久しくなる、つつしんで天理に従って生きてきたが、このうえは襟を正して死ぬ時を待とう(亹亹:慎むさま、兢兢:己を戒めるさま)
日頃窮乏することは顔子に劣らず、勤苦することは董仲舒にも負けなかった、道未だ遠くして余生は短くなった、常に日の移り変わりの早いのを嘆いている(窮空:困窮すること、顔子:孔子の弟子顔回、董生:漢の学者董仲舒)
開禧元年(1205,82歳)の作。身体の衰えを嘆き、死期の迫っていることを畏れる気持ちを歌う。陸游は老いてなお知的な能力は衰えなかったので、身体の衰えがそれだけこたえたのであろう。
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