コクトーの八つの歌から「エリック・サティへのオマージュ(Hommage à Eric Satie)」(壺齋散人訳)
アンリ・ルソー夫人が
気球で空に上って行く
手に灌木を抱えながら
いっぽう税官吏のルソー氏は
アペリティフを飲んでいる
月で膨らんだアロエも
安楽椅子用の木材も
きれいなおべべも
お月さんも
みんな葉っぱの上に見える
アフリカライオンが
ズタ袋みたいなお腹をして
共和国像の足元を守る
アフリカライオンが
馬車馬をたいらげる
黒人の吹くフルートの中に
お月様が吸い込まれていく
ヤドヴィガがとろりとして聞いている
黒人がフルートの先から
なしの形を吐き出す
アンリ・ルソーは独特のメルヘンチックな画風で知られる画家だ。そのルソー氏が細君と一緒に気球に乗って空に上って行く。気球の中にはルソー夫妻のほかに、アロエや安楽椅子の材料となる木材や綺麗なおべべが乗っかっている。そしてその気球の上には、お月様が重なって見える。
アフリカライオンとは、トラファルガー広場にいるライオンのことだろうか。でもそうだとしたら、共和国を守っているはずがない、トラファルガー広場のあるロンドンは、イギリス王国の首都だからだ。
この不思議な詩が何故エリック・サティへのオマージュなのか、筆者にはわからない。誰かわかる人がいたら、是非教えて下さい。
Hommage à Eric Satie
Madame Henri Rousseau
monte en ballon captif
Elle tient un arbrisseau
Et le douanier Rousseau
prend son apéritif
L'aloès gonflé de lune
Et l'arbre à fauteuils
Et ce beau costume
Et la belle lune
Sur les belles feuilles
Le lion d'Afrique
Son ventre gros comme un sac
Au pied de la République
Le lion d'Afrique
Dévore le cheval de fiacre
La lune entre dans la flûte
Du charmeur noir
Yadwigha endormie écoute
Et il sort de la douce flûte
Un morceau en forme de poire.
関連サイト:フランス文学と詩の世界
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