進む右翼の教育介入

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先般口元校長というのが話題になったことがあった。公立学校の卒業式で教員が本当に君が代を歌っているか、口元の動きで確認したというので話題になったわけだが。その校長が維新の会の大阪府知事に取り立てられて教育長に出世するや、今度は大阪府のすべての公立学校長に、この口元確認を義務付けたというから、驚きだ。

これは右翼勢力がじわじわと教育現場を支配しようとしている意欲を感じさせるが、そんな意欲を感じさせられる事態がまた一つ起こった。沖縄県の竹富町に対して、文部省が教科書の採用を巡って、地方自治法に基づく「是正要求」をするというのだ。

竹富町は、石垣、与那国の二市町とともに、「教科書無償措置法」に基づく「採択地区協議会」を作っているが、その協議会で意見が分かれ、ほかの二市町は育鵬社版の中学公民教科書を採用したのに対して、竹富町はこの協議会の手続きに問題があったとして、それに服せず、独自に東京書籍版を採用した。その結果国による助成が受けられないこととなり、町では寄付金を募って教科書の購入に充てたという。

ところがこれに対して、文部省は「教科書無償措置法」に違反しているとして是正命令を出したというわけである。今のところ、メディアの論調などは法的手続き論に終始しているようであるが、これも大きく見れば右翼的な政権による教育介入と考えられないことはない。

育鵬社版の中学公民教科書は、いわゆる靖国史観によるものだ。靖国史観の特徴は、記紀神話に書かれている事柄は実際にあった歴史的事実であり、また、アジア太平洋戦争は、日本によるアジア諸国の侵略などでは決してなく、アジア諸国を欧米の植民地化政策から解放するための正義の戦いだったと主張するところにある。日本の右翼勢力が随喜の涙を流してありがたがっている主張である。

安倍政権下の文部省の本当の意図は、こうした靖国史観に基づく正しい歴史認識を一人でも多くの子供たちに叩き込みたいということなのだろう。だから、今回のように、自治体に瑕疵があると認めれば、それをあげつらって、自分の意のとおりにさせる、そういった思惑が透けて見えてくる。

しかし、靖国史観を叩きこまれた子どもは痴愚蒙昧な大人になる恐れが強い。バイアスのかかった主張を教科書に盛り込み、それを強引に教育現場に採用させるようなやり方は、日本の教育を荒廃させるだけではないのか。


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