コクトーの八つの歌から「アグラエ(Aglaé)」(壺齋散人訳)
冷たい水をぐびぐびとわたしは飲む
もういちど短剣のひとつきをわたしは飲む
重い重いかたまりが
暗黒の体内を疾走する
水柱がちょろちょろと盛り上がり
ベゴニアのかたまりのようなしぶきをあげる
そのかたちはまるで草のなかにいる
塗れたざりがにのよう
海の底の方で
綺麗な鰓をした二匹の魚が
白い木の上で歌ってるけど
だれもそれを聞いていない
アンフィトリスには会えないと思うわ
鱒たちのこの陽気な行列には
アグラエはフランス人の女性の名前のひとつ。この詩の中では、彼女に言及したところがないことからみると、この詩の語り手が彼女なのかもしれない。そう解釈すると、詩の内容が腑に落ちるようだ。
呑まれた短剣が降っていく暗い体内から、暗い海の底が連想される。そこには綺麗な二匹の魚が歌っているけど、誰も聞いている者はない。海の底には、人が住んでいるわけがないから。
そのかわりにアンフィトリスが住んでいるかもしれない。彼女は海の王者ポセイドンの妻で、海の女王だ。もっとも、彼女に会うことは簡単ではないらしい。
Aglaé
Je bois l'eau froide par saccades
Coup de couteau je bois encor
O lourde lourde cavalcade
Galope dans la nuit du corps
Le jet d'eau boîte, éclabousse
le massif de bégonias
On dirait que dans l'herbe il y a
Des morceaux mouillés de langouste
Aux profondeurs d'un océan
Deux poissons aux belles ouoes
chantent sur un arbre blanc
Mais leur chanson n'est pas ouoe
Tu n'auras jamais Amphitrite
Ce joli cortège de truites
関連サイト:フランス文学と詩の世界
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