ピカソは、バラ色の時代に、道化役者と子どもの組み合わせをいくつも描いている。この「道化役者と子ども(Comedien et enfant)」は、それらの中でも最も有名な一枚だ。赤い衣装をまとった道化役者と、青い体操着を来た子供が並んで立ち、道化役者が子どもの肩に手を置いているが、かといって親密な雰囲気は伝わってこない。というのも、二人は別な方向を見ており、それぞれにバラバラなことを感じさせるからだ。
旅芸人やサーカス芸人の親子を描いたピカソの絵には、暖かさよりも、悲しさを感じさせるものが多いのだが、それは対象となった人々の方に原因があるのか、あるいは彼らを眺めるピカソの視線に原因があるのか、はっきりしたことはいえない。
この二人が、旅芸人の親子なのか、それともサーカスの軽業師の親子なのか、画面からだけではわからない。
(1095年、カードボードにグアッシュとパステル、70.5×52.0cm、大阪、国立国際美術館)
関連サイト:壺齋散人の美術批評
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