母と子:ピカソ、子どもを描く

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ピカソは、青の時代からバラ色の時代にかけて多くの母子像を描いたが、1921年に自分の子どもが生まれると、再び多くの母子像の制作に取り掛かった。この年だけで9点もの作品を描いている。そして、その描き方は当然のことながら、以前のものとはかなりちがったイメージのものになった。ピカソは「新古典主義」的な技法でこれらの母子像を描いたのである。

新古典主義的な技法とは、古代風の衣装をまとったふくよかな女性たちを、躍動感たっぷりに描くものである。それは、キュービズムを経過して現れたことから、対象のボリューム感を強調して、立体的に描くという特色を持っている。したがって、母親も子どもも実際以上に肥満して描かれる。そんなところから、自分の妻や子をリアルに描いたというよりは、かなり観念的に描いたという印象を与える。

この絵「母と子(Maternité)」の中の母親もローマ風の衣装をまとい、子どもを膝の上に乗せて戯れているが、子どもも母親もたっぷりとした肉体を感じさせ、しかも、遊びの動作がもたらす躍動感にあふれている。新古典主義的な様式で母子を描くとこのような絵が出来上がる、ということを納得させてくれる描き方だ。

(1921年、キャンバスに油彩、97×71cm、日本、個人蔵)


関連サイト:壺齋散人の美術批評  






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