安倍外交への海外からの視線

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アベノミクスの当面の成功で、欧米諸国始め海外の評判もマアマアだった安倍政権だが、このところ、評判を落とすような失態を、ほかならぬ安倍首相自身がしているとあって、安倍政権下の日本を見る海外メディアの眼が厳しくなってきた。

先日のダボス会議での発言(今の日中関係は1914年以前の独英関係に似ている)は、世界中のメディアをびっくりさせ、日中間の戦争勃発を本気で心配する者まで現れたほどだが、発言した当人は、その影響についてまったく考えが及んでいないようで、そこがまた、欧米メディアに奇異な感じを抱かせる要因となっている。安倍晋三という人は一体どういう人なんだろう、こういう人が国際関係上重要なカードを握っているという事態は、世界全体にとってリスク要因になるのではないか、というわけである。

そうなると、ダボスでの発言に留まらず、日本外交全般について疑念を持たれるようになる。最近の日中両国のさや当てぶりについても、皮肉な目でみる者もあらわれてきた。いままでは、日本外交が欧米メデォアによって表立って批判されることはあまりなかっただけに、日本にとってはよくない流れが生じてきたと考えられる。

欧米メディアによるそうした新しい見方について、英誌Economist が典型的な書き方をしていると思われるので、それを紹介したい。(The horcrux of the matter Intense diplomatic competition between China and Japan shows tempers rising dangerously)

イギリスでは先日、日中それぞれの駐英大使が互いに相手をヴォルデモールト呼ばわりして、罵り合ったところだが、いままではそれを表立って批判する論調はイギリス国内では目立たなかった。ところが、Economist の上記記事は、これを下品(petty)な罵り合いと表現して、どっちもどっちだというような受け止め方をしている。日中両大使による罵り合いはイギリスに留まらず、数十か国を舞台に広げられているが、それらもやはりどっちもどっちといったふうに受け止めている。日本の外務省は、中国からの挑戦に真っ向から受けて立っているつもりなのかもしれないが、第三者の眼には、犬の喧嘩くらいに思われているわけである。

両国の罵り合いは、当面第三国には関係のないこととして受け取られているが、両国が互いにホットになっている隙に、ちゃっかりそれを利用して点を稼いだ国がある。韓国だ。韓国はハルビン駅前に安重根の銅像を立てて欲しいとかねがね中国に依頼していたが、中国は当初無用な日中対立を懸念して躊躇していたものを、今では公然と日本攻撃の材料に使えるとあって、銅像どころか待遇を何ランクもアップさせて「安重根記念館」を作ってやった。

両国の対立で恩恵を被っているのは韓国だけではない。アフリカ諸国も思わぬ恩恵を被った。というのも、安倍首相はコート・ディヴォアールなどアフリカの数か国を訪問して手厚い援助を約束したが、それがアフリカで存在感を高めている中国に対抗するためだということはミエミエだ。Economist はそれを、みっともない(unseemly)と称して、安倍首相のあまりにミエミエな外交姿勢を皮肉っている。

中国のアフリカ政策は、腐敗した政権の下支えなどが批判されて、これまで国際社会で評判が悪かったのだが、その中国と日本が五十歩百歩と受け取られるようでは、つまり中国のやっていることは日本と対して変りはないと受け取られるようでは、安倍首相は中国のために善いことをしたということにもなりかねない。

大使同志の罵り合いといい、アフリカを舞台にした外交合戦といい、日本は中国とまったく同じレベルで争っている、という風に見られている。そもそも相手の方から無礼の振る舞いに及んできたときには、一段と高いところから相手の無礼をたしなめるというのが紳士のやり方というものである。それを、相手がジャブを繰り出してきたから、こちらはパンチで応じるというのは、能ある者のすることではない。ところが安倍さんにそこの所がわかっていないようなのは、目先のことで頭がいっぱいだからなのか。

短謀は遠慮に如かず、急がば回れ、というではないか。安倍さんにはもうすこしお利口さんになってもらいたいものだ。







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