片山善博氏が、JR北海道の不祥事とそれに対する国土交通省の居丈高な断罪ぶりに触れて、興味ある提言をしている。(「JR北海道の安全管理と道州制特区」世界3月号)
氏は、今回の問題の根には、国土交通省の中に、鉄道の事業推進部門と安全管理部門が同居していたことがあったことを指摘し、それでは、安全管理は事業推進の影に埋没しかねないから、事業推進部門と安全管理部門は違う組織によって担わせることが必要だと強調している。原子力安全部門もかつては資源エネルギー庁の中にあったわけだが、それが原因で、安全対策がおろそかになったことは否めない。福島の事故を教訓にして、遅きに失したとはいえ、それを違う組織に担わせることにしたのは間違ったことではない。
こう氏は言った上で、鉄道の安全部門も、違う組織によって担わせるべきだというのだが、その場合に、それを政府から切り離して北海道庁に担わせたらどうかと提案している。北海道庁なら、住民の安全をもっと真剣に考えるだろうというのである。
しかも、北海道庁は特別の法律に基づき「道州制特区」になっている、と氏は指摘する。将来の道州制の導入をにらんで、当面北海道だけを対象に、国が持っている事務や権限を大幅に委譲しようとする試みである。これを利用すれば、鉄道の安全部門を北海道庁が担うことができるようになり、安全対策はもっと真剣なものになるに違いない。
ところが、道州制特区とは名ばかりで、その実質は何も進んでいない、といって氏は政府を批判している。鉄道の安全にとどまらず、道州制によって移譲すべき国の事務や権限は多数にのぼるはずだ。そのなかでも鉄道の安全管理は、すぐにでも移譲できる分野だ。それなのに、国土交通省には、これを北海道庁に移譲する考えは全くないらしい。
「口では道州制を唱えながら、それが北海道道州制特区の現状を変えられないのなら、羊頭狗肉も甚だしい。鉄道安全管理の権限移譲は、国の姿勢を問う試金石である」と氏は結んでいるが、筆者もまったく同感である。
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