派遣労働の規制緩和はするが派遣は増やすべきではない:安倍首相の奇妙な理屈

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国会の質疑(衆議院予算委員会)の中で、派遣労働の規制緩和についての野党の質問に対して、安倍首相は、一方では派遣労働についての規制を大規模に緩和し、ほとんど規制なしの状態に改めようとしながら、派遣で働く人々を「増やすべきだとはまったく考えていない」と答弁した。

今回の規制緩和によって、企業はより自由に派遣が活用できるようになり、したがって派遣の人数も増えるだろうと予想される。これは、誰が考えても当たり前のことだし、じっさいその通りになる確率は、100パーセント近いと予想される。何故なら、派遣の使い勝手を良くして、企業がもっともっと派遣を使うようにと誘導するのが、この改正の趣旨だろうからだ。

それなのに、安倍首相は、派遣は増やすべきではないという。いったいどういうつもりでそういうことをいうのか、筆者のような人間にはよく理解できない。筆者が愚かなのか、安倍さんが詭弁を弄しているのか、どちらかだろう。

この改正によって、派遣労働者は一定年限ごとに派遣先を変るよう余儀なくされる境遇に陥るわけだが、そのことについては、「節目節目でキャリアを見つめ直していただく」いい機会になるとの認識を示した。つまり、一定年限ごとに派遣先を変えることは、キャリアアップにつながるといっているわけだ。もし本当にそうなるのなら、派遣もそう捨てたものではない、といえよう。

だが、そんな風になるとは、どんなお人よしでも想像できないだろう。一定年限ごとに派遣先を変えるということは、変るたびに待遇が良くなることを意味せず、悪くなることを意味するというのが、いまの日本の常識だ。いまの日本では、ごく少数の例外を除き、転職はキャリアダウンと同義なのだ。

これは、筆者のような愚かな人間だけでなく、最低限の常識を持った人間ならだれでもそう思うだろうということだ。ところが、安倍さんは、そうは思わない。安倍さんにとっては、派遣を通じての転職は、キャリアアップをもたらし、待遇の改善にもつながるのが本来の姿だ、本来そうであるのに、そうならないのは、ならないことがおかしい、ということらしい。








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