この自画像も、点描画法の実験の一つとして、それもゴッホの絵の中でもっとも新印象派的な要素の強い作品として知られているものである。前の二作同様、点はアクセサリーとして使われているが、ここではもっと意識的な使われ方をしている。というのは、前の二作においての点は、かなり無秩序に施されているのに対して、この絵の中の点は、ゴッホの顔を中心として、同心円状に施されているのである。
この絵には他にもう一つ重大な要素がある。短い線がいたるところにあるのだ。この線は、後にひまわりの絵を始め、ゴッホの絵のもっとも重要な特徴として発展していくものだ。ゴッホは、スーラらの点描画の向うを張って線描画ともいうべきものを模索しているのだろうか。見る者をしてそんな想像を抱かしめるようなところがある。
この絵の中のゴッホの表情は非常に引き締まっている。それは、芸術に革新をもたらそうとしている意欲ある人間の表情だといえるのではないか。
(1887年夏、キャンバスに油彩、44.0×37.5cm、アムステルダム、ファン・ゴッホ美術館)
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