天平時代後期の仏像2:東大寺誕生釈迦仏

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(東大寺誕生釈迦仏、銅造、像高47.0cm)

毎年4月8日は釈迦の誕生を祝う灌仏会という儀式が催される。その儀式に本尊として用いられるのが誕生釈迦物である。生まれたばかりの釈迦の姿をかたどっているこの像は、仏伝に従って、生まれたばかりの釈迦が「天上天下唯我独尊」と言ったという姿を現している。

東大寺に伝わるこの誕生釈迦仏も、右手で天上を指し、左手で天下を指しているように見える。儀式ではこの像の頭の上から香水を灌ぎかける。そのことから甘茶のおしゃかさんとも呼ばれ、また花の季節に行われることから花供養とも呼ばれる。

日本でも灌仏会の儀式は古くから行なわれ、推古天皇14(606)年にすでに元興寺において灌仏が行なわれた例がある。そんなことから誕生釈迦仏の遺品は多数伝わっており、そのなかには天平時代の様式を窺わせるものも多いが、なんといっても最大の傑作は、この東大寺の誕生釈迦仏だといえる。

この像は、丸々と太った姿で可愛らしい笑みを浮かべ、非常に明るさを感じさせる。大仏開眼供養の後いくばくも経たない時期に作られたと推測される。

なお、付属の灌仏盤も本体と同じ時期に作られた。盤の外側には鳥獣や草花の文様が線彫りで施されており、これはこれで素晴らしい意匠である。

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