火の説教4:T.S.エリオット「荒地」

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T.S.エリオットの詩「荒地」から、「火の説教」4(壺齋散人訳)

  「音楽が水の流れに乗って俺の傍らを過ぎていく」
  ストランド通りを進み クィーン・ヴィクトリア通りを行くと
  そこはシティだ そこで俺は時折
  ロアー・テムズ通りのパブの傍らに立って
  マンドリンの楽しげな調べを聞いたり
  食器の音や人間のしゃべる声を聞くのだが
  それは猟師たちがたむろするパブの中から聞えて来るんだ
  またそこではマグナス・マーター寺院の壁の
  白や金色のイオニア風の柱が得も言われぬ荘厳さに輝いているんだ

冒頭は、シェイクスピア「テンペスト」1幕2場からの引用。この前の部分で女のかけたレコードが、ここでの音楽の連想に結びついたわけだ。その途端に、語り手も他の男に切り替わっている。

ここで言及されているのはロンドン中心部のシティ。マグナス・マーター寺院はそこからやや外れたところにある(ロンドン橋の北)。原注では、この教会の内部は、クリストファー・レンの作った建築物の中で最も美しいと言っている。


  "This music crept by me upon the waters"   
  And along the Strand, up Queen Victoria Street.   
  O City City, I can sometimes hear   
  Beside a public bar in Lower Thames Street,   
  The pleasant whining of a mandoline   
  And a clatter and a chatter from within   
  Where fishmen lounge at noon: where the walls   
  Of Magnus Martyr hold   
  Inexplicable splendour of Ionian white and gold.   


関連サイト:英詩と英文学 






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