安倍政権の外国人労働者活用論

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国土強靭化と称するばらまきにオリンピック需要が加わって、建設業を中心に深刻な労働者不足が生じている。そこで、安倍政権は外国人労働者を活用する方向へと踏み出した。対策の中心は、いまある技能実習制度の弾力化だ。この制度による日本滞在の上限を3年から5年にのばしたり、一旦帰国した人にも再度の来日を許可するなどして、日本でできるだけ長く働いてもらおうとするものだ。オリンピックが行なわれる2020年までの限定的措置で、それ以降は日本から出て行ってもらうという、ある意味都合の良い措置だ。

外国人労働者を活用したいが、その人たちに日本に居座られては困る、という思惑が透けて見える。かれらはあくまで一時しのぎの出稼ぎ労働者であり、移民として受け入れるつもりはないということだろう。しかし、ある国で5年間も働くというのは、移民に限りなく近いというのが国際的な常識になりつつある。そんな動向の中で、外国人を労働力としてしか見ないのは、ある種の人権侵害ではないかとの批判をうける可能性もある。

そんな根本的な問題に眼をつぶりながら、外国人を労働力として受け入れていけば、いずれ深刻な事態に直面することになるだろう。安倍自民党は、建設業以外の分野、たとえば医療や介護の現場にも外国人の活用を拡大させていくことを考えているらしい。こんな調子で、なし崩し的に外国人労働者を受け入れていけば、日本はいずれ外国人労働者なしでは、成り立たない社会へと変化していくに違いない。

その場合に、もっとも懸念されるのは、外国人労働者と日本人労働者との間で深刻な問題(たとえば日本人が雇用を奪われるとか賃金を引き下げられるとかいった問題)が生じるほかに、外国人労働者への人権侵害を指摘されるような事態が予想されることだ(たとえば日本人労働者に比較して外国人の雇用条件が悪かったりセーフティネットから除外されたりすることなど)。

これからの日本は、長期的な人口減少トレンドが続く中で、労働力も減少していくと考えられる。それは2020年度で止まるような一時的なものではなく、場合によっては、100年単位で続いていく傾向だ。したがって、構造的な問題だと考える必要がある。構造的な問題には、抜本的な対策を施さねばならない。場当たり的な対応を重ねていくだけでは、そのうち取り返しのつかない事態に陥る可能性が高い。





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