T.S.エリオットの詩「荒地」から「水死」(壺齋散人訳)
フェニキア人のフレバスは 死んでから二週間もたつので
カモメの鳴き声も 深海のうねりも
損得勘定も忘れてしまった
海底の流れが
ささやきながら彼の骨を拾った
彼は立ち上がったり倒れたりしながら
青春のステージを駆け抜け 渦に突っ込んでいったんだ
キリスト教徒であれ ユダヤ人であれ
舵をとり風向きをはかる君よ
かつては君と同じようにハンサムで背の高かったフレバスを思い起こせ
この節には、エリオット自身による原注はない。冒頭の「フェニキア人のフレバス」云々は、第一節に出てくるマダム・ソソストリスの予言(溺死したフェニキアの船乗り)が実現した形だ。
そこからイメージは水死につながるが、ここでの水死は、この詩全体のテーマにかかわるオシリスやアドニスの水中の死を思い出させる。
IV. DEATH BY WATER
Phlebas the Phoenician, a fortnight dead,
Forgot the cry of gulls, and the deep seas swell
And the profit and loss.
A current under sea
Picked his bones in whispers. As he rose and fell
He passed the stages of his age and youth
Entering the whirlpool.
Gentile or Jew
O you who turn the wheel and look to windward,
Consider Phlebas, who was once handsome and tall as you.
関連サイト:英詩と英文学
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