甲状腺がんと鼻血

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福島県が、福島原発事故による子どもの甲状腺がんへの影響について、調査結果を発表した。それによると、結果がまとまった28万7千人のうち、50人について甲状腺がんの確定診断がなされ、疑いのある子どもを含めると、90人にものぼるという。

これについて、テレビ朝日の報道番組が報じていたが、この数字は通常のケースと比較して非常に高いとする意見があるとする一方で、これはスクリーニング効果によるもので、必ずしも高いとは言えず、まして福島原発事故の影響によるものと断定することはできない、とする意見も紹介していた。

後者の意見の根拠として、ある学者は、これまでの知見によれば、100ミリシーベルト以下では甲状腺がんは発生しないことになっており、今回対象となった子供たちの被ばく線量が100ミリシーベルト以下であることを踏まえると、これが福島原発事故によるものとは言えない、というようなことを言っていた。

これは、あるはずがないのだから、ない、といっているのに等しい。そこには、あるはずがない、というのは果たして本当だったのか、ということについて検証しようとする姿勢が感じられない。どうも、こういっている連中には、面倒なことはあまり大きくしないようにとの、考慮が働いているとしか受け取れない。

先日は、福島原発に関わった人々が鼻血に見舞われるというシーンを描いた漫画が物議をかもした。これについては、福島の地元の人々から、風評被害や差別に繋がるという批判が出た一方、自分たちの不安を代弁してくれたと好意的な見方をする人もあったようだ。

地元の人々が風評被害や差別を恐れて、この漫画に反感を感じたのは理解できる。しかし理解しがたいのは、環境庁の長官(平成の明智光秀と呼ばれた男)を初め、政治家たちがいっせいにこの漫画を非難したことだ。かれらは、このような表現は風評被害をもたらすからけしからぬ、の一点張りだが、一方では、現実に健康不安に苦しんでいる人々がいるわけで、そうした人々への理解は感じられない。面倒な騒ぎを巻き起こしてけしからぬ、といった低次元な意図ばかりが感じられる。





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