山王祭麹町地区各町連合宮入を見る

山王祭と神田の祭が隔年ごとに催されているのは、徳川時代以来の習わしだったようだ。それは、この二つの祭礼の行列の一行が、隔年ごとに江戸城内に入ることを許されたことに基づく。天下祭という言葉は、江戸城内において、将軍自らの謁見に浴する光栄ある祭と言う意味だったのである。

山王祭と神田の祭はいまでも隔年ごとに本祭が催されている。今年は山王祭の本祭が行なわれる番だった。神田の祭は5月の中旬に行われるのに対して、山王祭が行われるのはだいたいが六月の半ばだ。したがって勢い、雨にたたられることが多い。しかし、今年は天気に恵まれて、見物人も多かったようだ。

山王祭は、氏子の領域が広いこともあって、神田祭のように全町の神輿が一斉に渡御・宮入するということはない。その代わりに、京橋・日本橋地区、麹町地区に別れて連合渡御の催しが行われる。京橋・日本橋地区の方は、東海道のメインストリートを神輿が行列を組んで渡御するというものだが、麹町地区の場合には、連合渡御をしたあと、順次日枝神社に宮入するということになっている。

筆者はこれまで、山王祭の神幸祭の様子や京橋・日本橋地区の連合渡御の様子をこのブログで紹介したところだが、今年は麹町地区の連合宮入を取材しようと思って、現場に赴いてみた。

事前案内によれば、午後4時に各町神輿が清水谷公園に集合して一斉に出発し、日枝神社まで連合渡御するとあった。

三時過ぎに清水谷公園についてみると、まだ各町の神輿の姿はなかったが、やがて次々と現れて4時すこし前にはすべてが出そろった。提灯で確認すると、各町の内訳は、宮元の周辺たる永田町・平河町地区、麹町六町、番町六町、九段という具合になっているようである。しかし、すべての町が神輿を持ってきたわけではないので、神輿の数は十に満たない。そのかわりに山車が何台かあった。

予定通り午後4時丁度に行列が出発した。神官を先頭にして、木遣を歌う旦那衆とおめかしした女の子たちが続き、さらにその後に各町の提灯が続く。そして提灯の後に各町の神輿が続くというわけだ。土地柄か、神輿を担ぐ人の中には外国人の姿も見かける。

行列は弁慶橋を渡って外堀通りを練り歩き、山王センタービルの先の路地に入り、日比谷高校傍らの坂道をぐるっと回り込んで神社正面の石段の前にたどりついた。そこから、一基づつ石段を上り、順次宮入するというわけだ。石段の周囲には大勢の人が集まり、そのなかで人にもまれて、都合のよいカメラアングルを確保するのが難しかったが、望遠レンズを用いたりして、なんとか恰好のついた写真を撮ることができた。

このように神輿が石段を上ったり下りたりすることでは、愛宕神社の出世の石段が有名だ。愛宕神社の場合には、上った当の石段以外に下へ戻る道がないようだが、日枝神社はほかにも逃げ道がある。

どちらが先に石段上りを始めたかはわからないが、神輿が石段を上っていくのを見るのは、なかなかよい眺めだ。

・東京の祭