ドイツと日本の財政比較

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先日、ドイツが46年ぶりに無借金財政に戻ったということが話題になった。いわゆる経済アナリストの中には、これを日本と比較して、何故ドイツではできたことが日本では難しいのか、といった議論をする者もいた。そんなことは、別に経済アナリストたちの世話にならなくとも、わかりきったことだろう。ドイツには、財政が楽になるそれなりの事情が、日本には財政が苦しくなるそれなりの事情があるのだ。

ドイツの財政が楽になったのは、いうまでもなくドイツ経済が好調なためだ。その好調を支えているのは、EUの共通通貨ユーロである。このユーロがあるおかげで、ドイツはEU経済圏の中で独り勝ちに近いような好況を享受することができた。共通通貨のおかげで域内の競争条件が標準化し、それが高度な生産力を誇るドイツ経済を独り勝ちにさせるに預かって大きな力となった。ユーロの恩恵が及んだのは、対域内ばかりではない。対域外においても、ドイツ経済に有利に働いた。ドイツは相対的に安い通貨であるユーロを利用できることで、総体的に有利な条件で域外貿易を享受することができる。もしも独自通貨のマルクを現在も使っていたら、ドイツの通貨は相対的に値上がりし、貿易には不利に働いていたはずのものが、ユーロを使うことで、その不利を克服することができたのだ。

こんなわけで、ドイツ経済の好調の秘密は、ユーロにある。ユーロは、ギリシャやスペインの経済には抑圧的に働いてきたが、ドイツに対しては極めて有利に働いてきたわけだ。統一通貨ユーロは、EU域内の各国の経済規模を標準化させるのではなく、格差を拡大させ、勝ち組と負け組に分断する効果を持っている。ドイツはそのただひとりの勝ち組であったわけだ。

一方日本は、いうまでもなく、独自通貨の円を用いている。独自通貨にはそれなりに良い面もあるが、ユーロがドイツ経済に与えたようなメリットは与えてくれない。ユーロのような下駄を履いて、国際競争に臨むというわけにはいかない。いわば掛け値なしの経済運営を迫られるわけだ。そんな中で、日本は長い間デフレに苦しんできた。デフレから脱却するために、歴代政権は様々な経済活性化対策を取ってきたが、その財源となってきたのはいうまでもなく借金だ。

こんなわけで、日本が自分の実力相応に掛け値なしの経済運営をせまられている一方で、ドイツはユーロのおかげで、対域内的にも対域外的にも、高い下駄を履いて競争することができる。それが、ドイツの経済を活性化させ、財政も楽にさせている最大の要因だ。それに対して、日本は自分の実力相応の経済運営をしなければならない。こんなことから、ドイツと日本の財政状況の相違が生まれてくるわけである。






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