
晩年のクレーの天使の絵の中で「忘れっぽい天使」とならんで人気のあるのが、この「鈴をつけた天使(Schellen-Engel)」という絵だ。題名にあるとおり、お尻のところに小さな鈴をぶら下げている。
この天使の絵も、わかりやすい形だ。めずらしくはっきりした脚を持ち、その二本の脚で勢いよく歩いているように見える。その歩くリズムに合わせて、鈴も勢いのいい音を立てているように感じられる。
鈴は、キリスト教文化にあっては、日常生活に溶け込んだものであるから、その音が聞こえてくるというのは、自分のまわりの世界が、正常に動いているという安心感を与える。クレーは、この絵を通じて、不安に駆られたヨーロッパの人々に、安心感を届けたいと思ったのかもしれない。
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