地獄草紙1(東京国立博物館本)

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(髪火流)

平安時代末期に作られた地獄草紙には、東京国立博物館本と奈良国立博物館本とがある。東京のほうは、六道の諸相を説く仏典「正法念処経」に基づき、奈良のほうは、宇宙の成り立ちを説く仏典「起世経」に基づいて、それぞれ地獄の諸相が描かれている。

東京本には四点の絵があるが、いずれも酒にまつわる罪を犯したものをテーマにしている。いわば、酒呑みの地獄である。

上の絵は、髪火流といって、他人に酒を飲ませ、戒律を破らせた者が落ちる地獄。鷲に脳天を破られ、犬に脚を食われ、血を流して苦しんでいる男が描かれている。

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(火末虫)

これは火末虫といって、水で薄めた酒を売った者が落ちる地獄。ここでは、体に湧いた蛆によって、自分の体が食い尽くされる。男女の区別はない。

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(雲火霧)

これは雲火霧といって、修行者を酒で誘惑して辱めた者が落ちる地獄。誘惑者には男もいれば女もいる。男女とも、地獄の獄吏によって猛烈な火炎の中に突き出されている。火炎の描写がいかにも真に迫っていてすさまじい印象を与える。

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(雨炎火石)

これは雨炎火石といって、旅人を酒で酔わせ、強奪したり殺害した者が落ちる地獄。火の石に打たれて苦しむ者や、熱沸河と呼ばれる炎の河に飲み込まれる者たちが描かれている。

この四枚の絵に共通しているのは、炎のイメージだ。地獄といえば、今でも炎を連想することが多いが、それは平安時代も同じだったようだ。

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