経済成長率は下落し資本収益率は上昇した:アベノミクスの格差拡大効果

| コメント(0)
今年度のGDPが0.5パーセント減との政府見通しが発表された。消費増税による個人消費落ち込みが主な原因だ。一方、アベノミクスの恩恵を受けて、大企業の懐具合は好調だ。株高で投資家の懐も潤っている。ということは、資本収益率が上昇しているということだ。

筆者は先日、いま話題のピケティの講義をこのブログで取り上げた際、ピケティの議論のキー概念として資本収益率と経済成長率を取り上げた。過去三百年の統計を取って見ると、資本収益率は経済成長率を上回るという歴然とした傾向が指摘でき、それが格差拡大の最大の原因になっているという内容だ。ピケティによれば、資本主義と言うのは、ブレーキが利かない限り、無限に格差を拡大させる傾向を持っている。そのブレーキとして、福祉社会とか富の平等とか言ったものがあったわけだが、それが近年働かなくなって、資本主義は本来の傾向を強めるようになってきた。その結果、21世紀はこのままでは、19世紀並みの格差社会になるだろうとピケティはいうわけだ。

翻って日本の現下の状況を見ると、アベノミクスなるものが憚りなく跋扈している。これは、一言で言えば、経済の好調を株価で判断するというものだ。株価が高いことは企業が好調なしるしだし、企業が好調なことは経済全体がトータルとして好調だということを意味するという主張だ。それ故、アベノミクスは、資本収益率を高めるようなことばかりやるわけである。

一方でアベノミクスは、日本経済の信認を確保するという名目で、庶民への増税には熱心だ。それと並行する形で企業へは減税の恩恵を与えようとしている。これでは、経済成長はますます阻害され、資本収益率はますます上昇するだけだろう。その結果、日本は他国に先立つような猛烈なスピードで、超格差社会に突入していくのではないか。アベノミクスは、資本主義の本質的な傾向を、ただ放任しているだけだはなく、それを積極的に推進させようというのだから。








コメントする

アーカイブ