寝覚物語絵巻:鎌倉時代の絵巻物1

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(寝覚物語絵巻第一段、縦25.8cm、奈良、大和文華館蔵)

寝覚物語は、更級日記の作者菅原孝標女の作だとする説が有力で、そうだとすれば、11世紀の半ばに成立したことになる。それを絵巻物にしたのが寝覚物語絵巻だが、これは12世紀後半から13世紀初期にかけて作られたと考えられている。ただし、源氏物語や伊勢物語と違って、現存するテクストと一致していない。現存テクストは、巻一と巻三であり、そのほかに、巻二と巻四があったと考えられるのだが、この絵巻物は、内容からしてそのいづれにも対応していない。そんなところから、巻五なのではないかとの推測もある。

現存する絵巻は、四つの絵と、第二段以降の詞書からなっている。上の絵は第一段。詞書もなく、現存テクストとの対応関係もないので、何を描いているのか、詳しくはわからない。

画面左側には吹き抜き屋台の殿舎が、右側には庭の様子が描かれている。殿舎の奥の部屋には、三人の女性が、その手前には、男の被った烏帽子の先が覗いている。庭では、咲き誇る桜の下で、三人の童が楽器を演奏している。真ん中の横笛を吹いている童が寝覚の上の二男、その両脇で笙を奏しているのは侍者の童だろう。

画面の作り方は、料紙に金銀の砂をまき散らすなど、平家納経を思わせ、全体として装飾的で、かつ様式的である。

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(寝覚物語絵巻第三段、同上)

この絵は、詞書から、貴公子まさこが愛する女三宮を訪ねる場面だとわかる。夏の季節感がよく出ている。

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