家計貯蓄率がマイナスになる

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内閣府の発表によれば、2013年度の家計貯蓄率がマイナスになったという。統計を取り始めた1955年以来初めての事態だそうだ。日本と言えば、高い貯蓄率が経済成長を支えてきたことが売り物だったわけだが、いまやそうした事態は過去の神話になりつつあるのだろうか。

家計貯蓄率がマイナスになったことの原因は、一つには高齢化、もう一つには若い世代の所得の減少だと考えられる。高齢化の進行に伴い、高齢者が過去の貯蓄を取り崩して生活するようになった。また、若い世代の所得の減少は、ストレートに貯蓄率の低下につながる。これらが相合わさって、家計貯蓄率を低下させ、ひいてはマイナスにさせたわけだ。

家計貯蓄率の低下の影響はいろいろと考えられる。経済学のイロハでは、貯蓄は投資と等しくなるとされている。したがって貯蓄が減ればその分投資も減ることとなる。だが、目下の日本経済には、投資意欲はないと同然なので、当面貯蓄率が下がったからと言って、経済に直接の影響はないだろう。

今の日本経済は、家計・企業併せた貯蓄は、投資に使われることなく、国債の消化に当てられているのが現状だ。日本の公的借金がGDPの二倍にも膨らんでなお破綻せずにいるのは、国内にそれを消化する資金があり、低利率で借金をすることができているからだ。しかし、今後家計貯蓄率が更なる低下を見せ、また、企業の投資が何らかの事情で活発化すれば、資金ショートを引き起こす可能性が高まるだろう。

いまのところ、家計部門の貯蓄は1650兆円にものぼり、当面は枯渇する恐れはない。しかし、家計部門の貯蓄率の継続的な低下は、新規国債のための原資の減少につながり、日本の国債の運用に深刻な影響をもたらすものと推測できる。

こんな次第だから、このまま家計貯蓄率の低下を放置しておくと、意外と早く日本の財政破たんが生じるかもしれない。







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