三代目市川八百蔵の田辺文蔵:写楽

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(三代目市川八百蔵の田辺文蔵)

「文禄蘇我」における田辺文蔵は、石井家の家臣として石井兄弟の仇討を助ける役柄である。だが、文蔵自身は非力で、頼りない存在として描かれている。その挙句、三幕目の安倍川の仇討場面では、源蔵もろとも返り討ちにあい、太腿を切られてしまう。

その後、六幕目では、借りた金の返事に窮する場面がある。石部の宿で、貧乏浪人の姿で登場した文蔵が、いかにも貧乏浪人らしく、風采の上がらぬ姿をさらす。月代は伸び放題、着物はみすぼらしく、うつむいた表情は、なんとも頼りのない有様だ。この辺のところが、忠臣蔵に登場する勘平とよく比較される。

三代目八百蔵は、時代物、世話物にわたって活躍した名優。後に二代目助高屋高助を襲名した。

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(嵐龍蔵の金貸石部金吉)

金貸石部金吉は文蔵に金を貸した高利貸し。六幕目で登場し、借金の返済猶予を願う文蔵に対して、居丈高に振る舞い、なけなしの金を巻き上げる。

腕まくりをした仕草や、眼をむき口をへの字に結んだところが、傲岸さを感じさせる。

嵐龍蔵は悪役を得意とした俳優。この舞台もなかなかの評判だったという。








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