これも10年以上前のスケッチをもとに描きなおした水彩画。季節は秋であった。同じく当時のコメントを併催する。
「東京方面から根岸線に乗って石川町駅で下車すると、列車の進行方向、トンネルの上の小高い丘に瀟洒な洋館の立つのが見える。周囲には視界を乱すような余計な建物もなく、ひとつ天を突くが如き尖塔は、西洋の絵本でも見ているかのようである。
「駅を出てこの丘に通ずる坂をのぼる。しばらく歩き丘の頂付近にたどりつくと、イタリア山という庭園があった。この洋館は起伏ある庭園の最上部に立っていたのである。折から秋も終わりに近い頃で、庭園の中の樹木は鮮やかに色づき、ところどころに、折りたたみ椅子に腰掛けスケッチブックを広げる人たちの姿があった。なるほど、この建物は遠めにも目を引き、近くから見ても絵になるのである。
「わたしも早速彼らに混じってスケッチブックを広げた次第である。帰りしなに建物の由来を調べてみたところ。もともとここに立っていたわけではなく、平成になって移築されたものだということがわかった。それまでは明治のさる外交官の家として、渋谷の南平台に立っていたそうだ。」
コメントする