北斎諸国名橋奇覧(三):摂州天満橋、三河の八ツ橋の古図

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(摂州天満橋)

摂州天満橋とは、大阪の大川に架る橋のこと、大阪三大橋の一つに数えられている。天満橋の名の由来は、近くにある天満宮から来ている。天満宮の祭である天神祭は、大阪の風物として古くから親しまれてきた。この絵は、その天神祭の様子を織り込んで描いたものである。

橋の上には、欄干に祭提灯が並んで掲げられ、橋の下では、祭提灯をかざした船が行き交っている。これは天満船と称する屋形船で、普段は川釣りを楽しむのに使われたが、天神祭の際には、このように祭提灯をかざして、川を行き来したというわけであろう。

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(三河の八ツ橋の古図)

三河の八ツ橋とは、伊勢物語の東下りの段で有名なところである。八筋の川に架る八つの橋と言うことになっているが、実際そのような橋があったのかどうか、はっきりとはしない。

北斎の時代には、どうも実存しなかったようだ。そこで北斎は、古図を参考に再現したという体裁をとって、この絵を描いた。

もっとも、この絵の中の八つの橋は、八筋の流れに別々に架っているのではなく、連続した一筋の橋として描かれている。しかも不必要に曲がりくねったり、ある部分では盛り上がったりと、普通は考えられないような形状をしている。このあたりは、北斎一流の遊びの精神が発揮されたものと考えられよう。








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