
(姿見七人化粧 大判錦絵)
「姿見七人化粧」と題したシリーズの一枚だとされるが、伝わっているのはこの一枚だけ。ほかの六枚は散逸してしまったのか、あるいは最初から作られなかったのか、よくわからない。しかし、この一枚は、歌麿の最高傑作のひとつとの評価が高い。
大きな鏡を前にして、身づくろいをする女の色気のある表情が描かれている。鏡の中に大きく写った顔の表情とともに、襟足の微妙な線など、後姿にも色気を感じさせる。
直接の説明はないが、着物の紋からして難波屋おきたと思われる。おきたは、寛政五年当時十八歳の娘盛りであり、この絵はその年頃のおきたを描いたもののようである。
なお、歌麿は中間色を配した色彩のバランスに優れていたが、時には色彩を抑えて黒を強調するすべも心得ていた。この絵は、黒の使い方がとりわけ印象的な一枚である。
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