法制審で性犯罪の厳罰化を検討

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法制審議会が、法務省の諮問を受けて、性犯罪の厳罰化の検討に入るという。背景には、裁判員制度の導入に伴い、殺人を中心にした凶悪犯罪の重罰化の傾向が強まっているなかで、性犯罪が他の犯罪と比較して軽い量刑で済まされていることへの、裁判員=市民の率直な違和感が働いているということらしい。

量刑ということでは、現行の刑法では、強姦罪が三年以上二十年以下の懲役、強姦致死傷罪が五年以上三十年以下の懲役だ。これは、強盗罪が五年以上の有期刑であることと比較して相対的に軽いと言う印象を与える。また、強姦罪は親告罪ということになっているので、被害者の告訴を要件としている。このことから、被害者がいわゆる泣き寝入りをすることで、加害者が罰せられない事態が一般化している。これは、正義の観点から問題だ、という印象を与える。

というわけで、検討の方向は、量刑の引き上げ、及び一定のケースでは被害者の告訴がなくとも訴追できるようにする、ということになりそうだ。

量刑の引き上げについては、強盗罪をはじめとした他の犯罪類型と徹底的な比較をしたうえで、相互のバランスをとることが肝要だろう。たしかに、現行刑法は、強姦で侵害された個人の尊厳よりも他人に奪われた財産の価値のほうにより強い力点を置いているように見える。これでは、人の命より私有財産のほうが重要だと言っているようなものだ。或は、女性の人権は物の値段よりも安いと言っているようなものだ。

強姦罪を親告罪としたことにはいろいろな理由があるようだ。強姦された女性の側の気持ちを尊重するだとか、女性のプライバシーを尊重するというのがその主な理屈だが、なかには、そうした理屈のあてはまらない強姦もある。たとえば、被害者が加害者から金で解決するように強要されて、それに抵抗できず、告訴に踏み切れないケースなどだ。だが、そうしたケースがあることを理由に、すべての強姦罪について、親告罪の要件を外すのは禍根を残すかもしれない。現行の刑事訴訟手続きでは、強姦の立証責任の大部分は被害者側にあることもあって、強姦で相手を告訴するのはなかなかハードなことだと言われる。したがって、親告罪の要件をはずすとしたら、刑事訴訟手続き上、被害者の立証責任を軽くするなど、一定の配慮が必要になる。それ以前に、実際に強姦された被害者たちが、どのようなことを望んでいるのか、そのあたりを入念に調べておく必要があるだろう。







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