(深く忍恋)
「歌撰恋之部」は王朝和歌集をもじった題名である。歌集に恋之部があるように、画集に恋之部があってもよい。まして美人画の画集とあればなおさらだ、というわけであろうか。
女の恋心を描いた名品との評価が高い。今日に伝わっているのは五品である。いづれも女のなまめかしい表情を捉えている。
「深く忍恋」と題したこの絵は、仕草から見て、大店の内儀を描いているのだろう。成熟した女の色気があふれている。
(夜毎に逢恋)
夜毎に逢っていた男から、今宵も逢いたいという手紙が届いたのだろうか。女はその手紙を握り締めて、これからの逢瀬を心待ちにしているように見える。
ふっくらとした顔の表情が若々しく見えるが、着物の柄は成熟した女のそれのようでもある。
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