教訓親の目鑑(一):歌麿の美人画

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(理口者 大判錦絵)

教訓親の目鑑シリーズは、歌麿晩年の傑作で、あわせて十枚が伝わっている。外題に眼鏡を描き、その中に「教訓親の目鑑」と記しているが、その内容は、親の目を盗んで手前勝手なことをする市井の娘たちの姿態である。女性の赤裸々な姿を描いた作品として、徳川時代後期の浮世絵師たちに大きな影響を及ぼした。

「理口者」と題したこの絵は、寝転がって太平記を読んでいる娘を描く。「利口者」ではなく「理口者」としたのは、この軍記ものの好きな女の理屈っぽい性格をほのめかしたものか。

高枕をしているのは、髪型を崩さぬための工夫。

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(正直者)

この娘は、右の手首に紙縒りを巻いているところ。こうすれば、家族や恋人が元気になるという俚諺を信じている様子である。

正直者という題は、俚諺を素直に信じて、思い人の息災を願う女心の正直さをさしているのだろう。

日本の美術 






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