「桃花小禽図」は、枝いっぱいに咲き広がった桃の花を背景に、五羽の小禽を描いたものだ。五羽のうち三羽は白鳩、二羽は青い羽と白い腹をした小鳥だ。二羽のうち一羽は、桃の枝に隠れて、頭しか見えない。一方鳩のほうは、三羽ともすっきりと見える。背景から白が浮き上がっているせいだ。
桃の花は密集して見えるが、幹と枝が重なる部分や葉が密集している部分は隙間をあけている。花の形はほぼ同じだ。花の輪郭線をぼかすことで、密集した花の群れがうるさく見えないように工夫している。
左手上に「若冲居士」の署名がある。日本の画家の中には、署名するための場所をわざわざ作る人が多いが、若冲の場合には、たまたま見つけたわずかな空間に署名することが多い。この絵の中の署名は、その典型的なものだ。(142.6×79.4cm)
これは白鳩の部分を拡大したもの。さして大きくもない鳩だが、周囲の桃の花の中に埋没しない存在感を示している。
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