
紅く色づいたかえでのもみじを背景に、一対の小禽を描く。植物のほうが前景に出ていることは、菊花流水図と同じだ。面白いのは、モミジの葉の一枚一枚が、濃淡の差をともないながらも、ほぼ同じ形に描かれていることだ。かえでの三本の枝も、大きさの違いはありながらも、全く同じ方向をむいている。そんなわけで、この絵には反復があふれていると言ってもよい。
小禽はオオルリと思われる。美しい声でなく青い鳥だ。夏にやってきて秋の終わりに南のほうへ帰っていく渡り鳥なので、この絵のなかのオオルリは、南へと渡っていく直前に、名残惜しく鳴いているわけであろう。
画面右下には土手が描かれている。その土手の向こう側に広がるのは、空であるのか水であるのか、俄かには判断できない。ただ、背景を単調にすることで、かえでのモミジが引き立って見える。(142.3×79.7cm)

これは、オオルリの部分を拡大したもの。二羽のオオルリがそれぞれ相手に顔を向けて、なにやらささやき合っているように見える。
・日本の美術
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