夫婦同姓と女性の再婚禁止期間に最高裁判決

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夫婦同姓と女性の再婚禁止期間について定めた民法の規定について、その合憲性をめぐる最高裁の判決があった。夫婦同姓については、民法の規定は合憲だとする一方、女性の再婚禁止期間については100日を超える部分については違憲だとの内容だ。

夫婦同姓は、すでに社会的に定着しており、家族の性を一つに定めることには合理性があるという理由から、合憲と判断したわけだが、これはあくまでも法解釈上のことであって、夫婦別姓たとえば選択的別姓について立法機関が論議するのは別問題として、これの今後のあり方については、国会の論議に投げかけた形だ。

一方女性の再婚禁止期間を、何故100日以上の部分についてだけ違憲としたのか、納得のいく説明があるとは言い難い。そもそも女性の再婚禁止期間の設定は、子どもの父親を特定するためというのが唯一の理由だったと言ってよい。ところが、DNA鑑定など医学的な調査の進歩に伴って、今では子供の父親が誰であるかは、ほぼ確実に特定できる。だから、これを理由として女性だけに再婚禁止期間を設けることには合理性があるとは言えない。

最高裁の15人の判事のうち、夫婦同姓の規定を違憲と判断したのは5人だ。5人のうち3人は女性判事だが、そもそも最高裁の女性判事は3人しかいないから、とりあえず女性判事はすべて違憲と判断したこととなる。もしも、最高裁判事の男女比がほぼ同一の割合だったら、夫婦同姓の規定は違憲と判断された可能性が高い。女性判事だけではなく、男性判事の中にもこれを違憲と判断した者がいたくらいだから、女性判事の割合が高まれば、男女同性が違憲と判断される確率は非常に高くなると思われるのである。

男女別姓が社会に定着しているというが、もしそうなら、この問題がこれほどまで大きくなった理由が何なのか、多数派の裁判官はよく考えた方がよいと思う。そうした裁判官は、夫婦別姓は日本のよき伝統であると主張する保守派の意見に影響されているのだと思うが、そもそも日本に男女同姓が確立したのは、明治の半ば以降のことにすぎない。それ以前は、妻は生家の性を名乗るのが基本だった。死後の墓にも、夫の性ではなく生家の性が記されていた。たとえば明治初期から中期にかけての劇作家依田学海は、日記(学海日録)の中で母親の葬儀の模様を書いているが、そこには母親の生家の斎藤姓をもとに、依田氏ではなく、「斎藤氏嬬人之墓」と記したとある。

このように、日本の夫婦同姓は、明治以降西欧の風習を真似て取り入れたものである。だから、日本古来の風習などと言うのは間違いである。

夫婦同姓を今後とも強要することには合理的な理由があるとはいえない。また逆に夫婦別姓を強要することにも大きな社会的な抵抗があろう。だから、間を取るということではないが、夫婦の自由な意思を尊重した選択的夫婦別姓が一番摩擦の少ない解決法かもしれない。





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