葬祭業は日本最後の成長産業?

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日本に残された最後の成長産業、それは葬祭業だ、というような記事を英誌エコノミストで読んで、思わず苦笑した(Peak death)。普段はあまり気にしていないが、改めて言われればそのような気がする。筆者を含めた団塊の世代が、すこしづつあの世へ旅立つようになり、あと十数年もすれば同時に大量にあの世へ行く事態がやってくる。それを踏まえて、これからの日本の死亡者数は、当分右肩上がりで増えつづけるだろう。葬祭業が多忙になるのは、自然の勢いだ。

この記事によれば、日本の死亡者数は2040年にピークを迎え、その時点で年間170万人に上るそうだ。この年には筆者も、もし生きていれば92歳になっているから、死ぬタイミングとしてはおそらく最後の年になるだろう。そのあたりをピークにして、団塊の世代を中心に日本中の老人たちが一斉にあの世に旅立つわけだから、葬祭業が活性化することは十分に考えられる。

日本の文化では、死は語るべきことではないとされ、したがって葬儀もある種のタブーになっている。そのタブーは、2008年の映画「おくりびと」で多少は緩んだとはいえ、いまだに強固なものがある。したがって葬祭業にビジネスチャンスが生まれたからといって、すぐに参入するものが増えるということでもない。

それ以上に深刻なのは、特に東京圏において、火葬場の絶対数が不足していることだ。東京23区に限って言うと、火葬場の数は、戦前とほとんど変わっていない。一番新しい火葬場である臨海斎場が2004年にできたが、それ以外には全く変わっていない。だから、これから死者の数が劇的に増えれば、当然火葬をめぐって需給のひっ迫が生じるだろう。死んでもなかなか焼いてもらえない仏が続出するに違いない。

これは笑えない話だが、もっと笑えないのは、孤独死が増えて、葬儀の面倒を見てもらえない人が劇的に増えるだろうということだ。墓の手当て以前に、誰の手で葬儀一式を無事に営んでもらえるか、その見込みのない人たちが今後やはり劇的に増えるだろう。そこで、企業の中では、それをビジネスモデルに引き入れ、生前に一定の契約を結んでおき、客が死んだときには、その葬儀の面倒をいたしましょうと提案するものも出て来たようだ。

だが、いまのところ、そうしたビジネスモデルは(イオンやアマゾンなども参入したという)、あまり成功していないそうだ。やはり葬儀についてのタブー意識が強いからだろう。だがもう、そんなことを言ってられる場合ではない。社会として一定の準備を整えておかなければ、そのうち孤独死したまま発見もされないで、死醜をさらす死者たちで日本中が溢れかえる、そんな事態になりかねない。





コメント(1)

壺斎様
 2040年の日本の死亡者数はピークを迎えるのですか。火葬場の数がたりなくなる。死亡者数が増えれば、死体処理の効率化がすすむのだろうか。葬儀の形態も変わりつつあるようですね。家族葬が増え、ひっそりと葬儀を済ませる。お墓の問題も墓地が少なってきているので、お寺で永代供養してもらうようになってきているようだ。
 老齢化が進めば進むほど孤独な高齢者が増えてくる。あまり明るい未来の日本の姿が描けない。
 人工知能が進み、ロボットの技術が高度化すると、高齢者を相手にしてくれるのがロボットだったりするのだろうか。
 2016/8/10 服部

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