巨人ニムロデ:ブレイクの「神曲」への挿絵

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井戸に突き刺さったものの中で特に目立つものがいた。創世記に出て来る巨人ニムロデ(ネムブロット)である。ニムロデは、人間界にわけのわからぬ言葉を持ち込み、それ以来人間は共通の言葉を失ったとされる。それ故、彼は罪深いとされるのだ。

 我は既にそのひとりの顏、肩、胸および腹のおほくと腋を下れる雙腕とをみわけぬ
 げに自然がかゝる生物を造るをやめてかゝる臣等をマルテより奪へるは大いに善し
 また彼象と鯨を造れるを悔いざれども、見ることさとき人はこれに依りて彼をいよいよ正しくいよいよ慮あるものとなすべし
 そは心の固めもし惡意と能力に加はらばいかなる人もこれを防ぐあたはざればなり
 顏は長く大きくしてローマなる聖ピエートロの松毯に似、他の骨みなこれに適へり
 されば下半身の裳なりし岸は彼を高くその上に聳えしむ、おもふに三人のフリジア人もその髮に屆くを
 誇りえざりしなるべし、人の外套を締合はすところより下方わが目にうつれるもの裕に三十パルモありき
 ラフェル・マイ・アメク・ツアビ・アルミ、猛き口はかく叫べり、(これよりうるはしき聖歌はこの口にふさはしからず)
 彼にむかひてわが導者、愚なる魂よ、怒り生じ雜念起らばその角笛に縋りて之をこころやりとせよ
 あわたゞしき魂よ、頸をさぐりてつなげる紐をえ、また笛のその大いなる胸にまつはるをみよ
 かくてまた我に曰ひけるは、彼己が罪を陳ぶ、こはネムブロットなり、世に一の言語のみ用ゐられざるは即ちそのあしき思ひによれり
 我等彼を殘して去り、彼と語るをやめん、これ益なきわざなればなり、人その言をしらざる如く彼また人の言をさとらじ(地獄篇第三十一曲から、山川丙三郎訳)


絵は、下半身を岸辺と化され、巨大な角笛を握った姿のニムロデを描く。








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