撃ったあとで尋問する:ドゥテルテ比大統領の戦果

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麻薬犯罪者の殲滅を訴えて比大統領に選ばれたドゥテルテ(写真はAP)。五月九日に就任して以来わずか三か月の間に、殺害した麻薬犯罪者の数は600人とも1000人ともいわれる。それらのほとんどは、裁判手続きなしに、問答無用で撃ち殺した。こうした手法を国際世論は、尋問してから撃つのではなく、撃ったあとで尋問するものだと言って批判している。撃ったあとでは大体犯人は死んでしまうわけだから、尋問も糞もないのであるが。

手法を批判されたドゥテルテには、恐縮する気配はない。犯罪者を相手に手続きなどにこだわっていては、いつまでも奴らを殲滅できぬ。なにせ奴らはまだ10万人も生き残っている。そいつらを一人残らず殲滅するには、見つけ次第撃たねばならぬ、そう言う鼻息が荒い。

ドゥルテのこうした手法の背景には、ミンダナオのダバオ市長としての20年以上の経験があると言われる。ミンダナオと言えばフィリピンで最も治安の悪いところだ。イスラムの反政府勢力や共産ゲリラの生き残りがいまだに力を持っている。俺はそうした連中と対立しながら、ダバオの治安の維持に努めてきた。仕事をうまく進めるには、少しぐらい手荒なことも必要だ。こうした信念がドゥテルテを動かして、この大殲滅作戦を推進させているのだろう。

殺した「犯罪者」の中には、ドゥテルテの政敵もいるのではないか、という疑問も上がっている。もっとも、犯罪者を殲滅するという名目で政敵を一掃するというのは、いまの国際社会では普通のことだから、ドゥテルテだけを非難するわけにはいかないかもしれない。

シリアのアサド政権といい、エジプトのシーシ政権といい、国民の命を自分の財産のように心得、それを自由に処分するのは財産所有者の特権だと思い込んでいる連中が、21世紀の国際社会にまだはびこっているというのは、あまり愉快な眺めではない。





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