アフリカで日中対立をあおる

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ケニアのナイロビで開かれた「アフリカ会議(TICAD)」に、安部晋三総理大臣が赴いていって、アフリカにおける日本の存在感をアピールした。それを聞いて見ると、「中国と仲良くするより日本と仲良くしましょう」というかなり政治的なメッセージが伝わってくる。アフリカの指導者たちも、この露骨なメッセージに接して、多少面喰ったのではないか。どうも日本の指導者は、我々を前にことさら日中対立に言及し、我々を日本の味方に引き入れようとしている、それがいいことなのかどうか、ここはちょっと慎重にならねばなるまい、そんなふうに受け取られたのではないか。

この会議は、日本の提唱で1993年にできた。それ以来五年ごとに総会を開き、経済協力に特化した議論をしてきたが、安部晋三政権の登場によって、俄に政治的な役割を期待されるようになったようだ。五年ごとだった総会を、前回から三年ごとに開くことにし、場所もこれまでは東京オンリーだったものをアフリカでも開くことに切り替え、アフリカ側の関心を盛りたてようとした。そして今回の総会では、安部晋三総理自らナイロビでの総会の場に乗り込み、アフリカ諸国に対日関係の強化を呼びかけたわけだ。

こうした安部晋三総理の動きの影には、アメリカの意向があると考えてよい。アフリカは、ヨーロッパと地理的に近い上に、アメリカとも大西洋を隔てているとはいえ、結構近い間柄だ(西アフリカからは、ワシントンも弾道ミサイルの射程圏内に十分入る)。そのアフリカでの中国の存在感が非常に高まっている。その存在感が高まった果てには、中国と軍事関係を結ぶ国が現れないとも限らない。それはヨーロッパにとっても、アメリカにとっても悪夢だろう。だからなんとかアフリカにおける中国の存在感を弱めるような努力をしなければならない。これがアメリカの正直なところだが、それにアメリカをご主人と仰ぐ安部晋三総理が、一役買って出たというのが、常識的な見方ではないか。

中国は最近キューバと軍事関係を強化する動きを見せてアメリカを大慌てさせた。キューバに中国の核ミサイルを配備されたら、アメリカは喉もとに匕首を突きつけられたような形になる。それはたまらないというので、積年の仇であったキューバ政府と仲直りせざるを得なくなった。アフリカについても、もたもたしていると中国に付け入れられ、アメリカの安全に重大な脅威が生じることとなる。それもまたたまらないことなので、アメリカとしてはあらゆる政治資源を動員して、中国の野心を食い止めねばならない。その政治資源の最たるものが、アメリカにとっては属国である日本の力だというわけであろう。






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壺斎様
 ラストフロンティアと言われているアフリカには既に中国が浸透している。そこへ日本の安倍総理が出かけ、官民あげてアフリカを支援すると申し出た。人材育成、保健システムの強化などインフラが重要だ明言した。中国の経済進出とは異なった手法を提示した格好だ。
 中国は6兆円の支援、日本は3兆円の支援であるという。アフリカで日中の激しいバトルが展開されるのだろうか。
 
 競争しあうことによってアフリカが善き方向にむかえばよいのだが、奴隷貿易によって富を収奪したヨーロッパ、アメリカよりはましと思うのだが・・・
資本主義の本質である利潤追求のかなたにみえるアフリカの将来はいかなる姿であろうか。
 2016/8/29 服部
 

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