瀬戸内寂聴尼はバカか?

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朝日の今日(10月14日)付の朝刊に、瀬戸内寂聴尼が「バカは私」と題する一文を寄せている。先日、日本弁護士会が死刑廃止を訴える集会を催した際にメッセージを寄せた、そのなかで死刑制度を進める人々を「殺したがるバカ」と言ったつもりが、それが犯罪被害者の家族に向けた言葉と誤解されて大いに批判された。自分としてはそういったつもりは全くなかったのだが、「そんな誤解を招く言葉を94歳にもなった作家で出家者の身で、口にする大バカ者こそ、さっさと死ねばいいのである。耄碌のせいなどと私は逃げない。お心を傷つけた方々には、心底お詫びします」と恐縮されていた。

筆者はこれに関することを、産経がネット配信した記事で読んだのだが、それには、寂聴尼が死刑廃止に反対する集会で、「殺したがるバカどもと戦ってください」と語りかけたところ、その場にいた犯罪被害者たちから、犯罪被害者の気持を踏みにじるものだとの抗議の声があがった、というふうに書かれていた。この記事から筆者は、「殺したがるバカども」というのは誰のことをさすのか、よくわからなかったし、もしかしたら犯罪者のことをさしているのかなどとも思ったりして、それにしても筋のとおらぬ話だなと感じたのだが、産経が書くことだから、どこかで狂っているのだろうと思って深くは追求しなかった。ともあれ、この記事が引き金になって、尼がいう批判、というより口汚い罵倒を伴ったいわゆる炎上が起きたようである。

産経の記事と寂聴尼の文章を突き合せて、やっと事態がよく見えてきた。尼は死刑制度を廃止すべきだという立場から、それを推進しようとする政府の役人どもを「殺したがるバカ」と言ったつもりが、産経はどういうわけか、発言の意図をよく分析せず、それに対して批判の声があがったとだけ報道した。ということはどうも産経は、批判が引き続き大規模に起るよう誘導したとしか思えない。

それに対して尼のほうは、怒りを表すでもなく、94歳にもなって誤解を招いたのは自分の不徳のいたすところだといった、大人の対応を見せているのはさすがといえよう。

産経は、寂聴尼の政府批判が気に入らなくて、こんな報道をしたのかもしれない。筆者としては、死刑制度については寂聴尼とは異なった考えを持っており、死刑制度は廃止する必要はないと考えているが、そんな筆者でも、尼から「殺したがるバカ」と言われて、気色ばむつもりはない。





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