海運橋、駿河町雪:小林清親の東京名所図

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(海運橋<第一銀行雪中>)

海運橋は、日本橋川から枝分かれした掘割にかかっていた。いまの兜町界隈にあたる場所だ。この橋の袂に、三井が一族の新たな拠点として「三井ハウス」を建てた。変則五階建ての、実に威風堂々たる建物で、俄に東京名所が一つ生まれたといって騒がれた。

ところがこの建物は、たった後すぐに第一国立銀行の社屋として買収された。だからこの絵には、「第一銀行雪中」という副題がついているわけである。

副題にあるとおり、第一銀行の建物も、海運橋の欄干も、雪に蔽われている。いまでこそ東京には雪が降り積もることは少なくなったが、徳川時代から明治にかけて、東京の冬は雪がつきものだった。

海運橋の袂には柳の木が植えてある。柳は江戸の町をいろどる街路樹として、庶民の心を癒してきた。

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(駿河町雪)

駿河町とは、いま三井本館や三越本店が立地しているあたりをさす。徳川時代のなかばに、三井がここに越後屋という呉服屋を始めて以来、三井の江戸における一大拠点になってきた。

その駿河町に、第一銀行に三井ハウスを売った金で、二代目の三井ハウスを作った。絵の中で、右手奥に見えるハイカラな建物がそれだ。三井は、日本橋通りを挟んで両側に店舗を展開していた。






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