カブスが108年ぶりにワールド・チャンピオン

| コメント(0)
161101.cubs.jpg

今年のMLBのワールド・シリーズは古豪同士の対決になった。1876年のナショナルリーグ創設メンバーであるシカゴ・カブスと1901年のアメリカンリーグ創設メンバーであるクリーブランド・インディアンズの対決だ。カブスは108年ぶりのワールド・チャンピオンを目指し、インディアンズは68年ぶりのワールド・チャンピオンをそれぞれ目指して戦ったが、勝ったのはシカゴ・カブスだった。それも一勝三敗の崖っぷちから巻き返した第七戦で、延長十回の死闘を制しての勝利だった。カブスのこの日を100年以上待ちわびたシカゴ市民は、さぞ狂喜したことだろう。

アメリカの球団は、ヤンキースのように東部を拠点にしたチームが強く、シカゴのような中西部に拠点を置く球団は、どちらかというと勝ちには恵まれなかった。それでも、地元の市民たちは、自分たちの球団として熱い応援を続けてきた。なにしろ100年以上もワールド・チャンピオンになるのを願って応援してきたのだ。半端ではない。こういう応援があるからこそ、創設以来100年以上も、フランチャイズを動かさなかったわけである。

カブスには面白いところがあって、著名な政治家との結びつきで知られる。20世紀前半にポピュリストとして名をはせたビリー・サンデーはカブスのプレーヤーだったし、ロナルド・レーガンも若い時代にカブスのために働いていた。どちらもエスタブリッシュメントに対抗する姿勢を示すことで人気を集めた。彼らの政治姿勢を、森本あんりは「反知性主義」と呼んでいる。

反知性主義は、反権威主義と言い換えることができる。野球に権威の概念を持ちこむのは邪道かもしれないが、ヤンキースのような常勝チームに立ち向かう弱小チームは、権威への挑戦者を思わせる。シカゴは、アメリカの中心たるニューヨークに対抗するという役割を長く果してきており、その点では反権威のシンボルといってもよい。

そのカブスが今年108年ぶりに優勝したことには何かの因縁が働いているのかも知れない。なにしろ今年のアメリカでは、政治の分野でも異例の事態が巻き起こった。その動きを見ると、アメリカという社会である種の地殻変動が起きていることを感じさせられる。カブスの優勝も、そうした地殻変動の一つの現れなのだろうか。(写真は優勝を喜ぶカブス・ナイン APから)





コメントする

アーカイブ